── 週1ワークが生産性の向上に寄与する─ まずは、事業として週1ワークをスタートされた背景について教えてください。玉城:弊社も2年ほど前までは、正社員が多数を占めていました。ただ、ある社員が退職する際、バックオフィス業務を誰かにお願いしたいと考え、そのときに主婦向けの求人サイトで募集をはじめました。その結果、複数の方から応募があり、最終的に入社していただいたのが、現在週1ワークをされている大月さんです。もっとも、最初は週1・月40時間では足りないと考えていました。その点については、前任の方がきちんと引き継いでくれて。また、引き継ぎ用の書類もきちんとまとめてあり、大月さんも無理なく仕事を覚えてくれたため、週1ワークの範囲で仕事をお願いすることができています。大月さんには主に経理を担当してもらっていますが、仕事は順調です。─ なぜ「週1」に着目されたのでしょうか?玉城:少しずつ働き方が変化する中で、週に1日という形態は、とても効率が良いのではと考えました。主婦の方もフリーランスの方も、忙しい日々を過ごされている。そうなると、細切れの仕事を週1でお願いした方がいいと思ったのです。週に1日だけであれば、他の活動とも切り替えつつ、パフォーマンスを発揮してもらえます。加えて、限られた時間の中で業務をこなすという意識が、生産性の向上にも寄与するのではという発想がありました。そもそも生産性を向上させるには、時間の使い方を工夫するのがベストです。フルタイムの勤務だと、どうしても時間単位で考えにくいもの。その点、週1・月40時間であれば、仕事の配分を工夫しつつ、集中して仕事をしてもらえると思います。── あらゆる職種は週1ワークで実現可能─ 1ワークは働き方の新しい概念だと思いますが、どのようにして定着させようと考えていますか?玉城:まず、自社で週1ワークに携わる人を増やすこと。それによって、再現性のある働き方であることを実践していきます。そのうえで、フルタイムとパートタイムという区分ではなく、機会の平等を前提とした環境を提供していくつもりです。極端な話、私はあらゆる仕事が週1ワークで成り立つと考えています。それこそ、バックオフィスであっても、経営者であっても同様です。職種や形態にこだわりません。売れるセールスマンほど遊んでいる時間が長いのがその証拠です。大切なのは、使える時間をいかに効率化させるかということだと思います。8時間働いていても、そのうちの30分で成果をあげているのであれば、正味30分の勤務でもいいわけです。時間を前提とするのではなく、仕事の中身を前提とすれば、個々人のキャリアという点からも定着しやすいのではないでしょうか。─ 現状、Dayzではどのような職種の週1ワークがありますか?玉城:経理や人事などのバックオフィス業務に加えて、経営者との壁打ち、既存事業や新規事業の開発、実行、ソフトウェアテスティングなどが主なところでしょうか。職種についてはいろいろな分野におよんでいます。営業もアリですね。イメージとしては、弁護士の働き方に近いかもしれません。弁護士の方はいわゆるタイムチャージでビジネスをされていますよね。時間単位で報酬をもらうという。そのような発想で、社内の仕事を週1でお願いするイメージです。時間は誰にでも平等ですが、仕事の場合、それぞれに単価あたりの報酬が発生しています。そうであれば、時間あたりの成果やコストが分かるようになった方がいいですよね。そのうえで、より高い報酬を得られればいいわけですから。── パラレルワークを前提としたこれからの働き方─ 社会の変化とともに、個々人の働き方も変わっていくべきなのでしょうか。玉城:これからは、あらゆる業種業態でパラレルワークが進むと思います。そうなったとき、きちんと時間を区切って仕事をするという発想は大切です。たとえばこの時間はこの会社、というように。もちろん、プロジェクトごとでも構いません。そのような働き方を前提にした場合、企業としても、時間単位でフィーが発生する方式に切り替える必要があります。また、限られた時間の中で働いてもらうためのマネジメントも欠かせません。仕組みとしても、発想としてもそうですね。─ 会社としても、働く側としても、意識しておく必要があるということですね。玉城:働く側としては、フルタイムで仕事をするのとは別の感覚値があると思います。少なくとも、セルフマネジメントは必須です。時間の使い方はもちろん、仕事の仕方、そして社内でのコミュニケーションなどですね。とくにコミュニケーションについては、一定の時間をかけるべきだと思います。きちんと意思疎通を図るには、質問と回答をお互いにくり返さなければなりません。だからこそ、対話は不可欠なものであると考えています。たとえば弊社の場合、週1メンバーとは、出勤時に対話をしています。報・連・相を受け、ブレイン・ストーミングをし、自身のタスクについても聞いておく。そのような過程を経て、仕事をしてもらっています。おおむね30分ほどでしょうか。週に1日、月に5日の勤務があった場合ですと、各30分なので150分。月4回の勤務でも2時間は対話する時間があります。月40時間のうちの2時間なので、これは大きいです。それだけの時間をコミュニケーションに投じています。── 企業・働く人の双方がすり合わせできる週1ワーク─ 実際に週1ワークをはじめてみて、トラブルなどはなかったのでしょうか?玉城:もちろん、週1ワークに向いている人もいれば、向いていない人もいます。最初は何の知見もないままはじめていたということもあり、これまで手探りで進めてきたというのが実情ではあります。だからこそ、入社時の理解を重視してきました週1ワークに共感していないまま入社してもらっても、お互い幸せにはなれません。向いているかそうではないかの判断は、最初のハードルになっているかと思います。ただし、週1ワークのいいところは、双方が最小の資源を提供し合えるところにあります。つまり、気軽にはじめてもらって、自分に合っていなければそこで判断してもらえばいい。インターンシップなどの就業体験と同様です。企業としては、いかにファンになってもらえるか注力する。求職者としては、自分に合っているかどうか、共感できるかどうかの判断材料にする。いきなりフルタイムで入社してしまうと、そのようなステップを踏むこともできませんよね。─ たしかに、フルタイムでの転職となると重い決断になります。玉城:その点において、週1の勤務はちょうどいいと思います。とくに今、企業は人の採用に苦しんでいます。フルタイムでの採用はなかなかできません。社会全体として考えても、週1ワークのような働き方が求められているのではないでしょうか。これからは、フルタイムとパートタイムという概念自体、それほど意味が無いと思います。僕自身、正規雇用・非正規雇用という言葉は好きではありません。雇用形態にこだわるのではなく、正当な評価と適正なフィーが重要です。─ これからも御社の事業として週1ワークを推奨していく予定ですか?玉城:そのつもりです。弊社はもともとブラウザやインターネットメディアの会社ですが、それらの既存事業と並行して、新しい事業をどんどん立ち上げていきます。むしろ、この事業は絶対にやらなければならない、とは考えていません。週1ワークもまさに、新しい事業のひとつです。僕としては、今ある会社の資源が新たな収益を生むために、間違った投資さえしなければいいと考えています。ですので、新しいアイデアがあればぜひチャレンジしていきたいですね。── 人材不足を解決するビジネスモデル“週1ワーク”の構想 ─ 週1ワークの未来についてはどのように考えていますか?玉城:どんな事業に携わるにしても、それらの活動がすべて事業開発につながっているという発想をもってもらいたいですね。職種や業種に関わらず。理想としては、レジュメに書いて誇れるキャリアを週1ワークで形成してもらいたいです。たとえば、「Dayzで週1ワークを経験しました」ということでも、そのときにあげた成果をきちんと他所でも説明できること。そのように考えれば、仕事に対する姿勢も、生産性についての発想も、変わると思います。限られた時間とは言え、時間を消費している以上、しっかりとバリューを出していく。一緒に時間を使う以上、ともに何らかの成果をあげていく。それが個々人のキャリア形成にも貢献するようになれば嬉しいですね。応募される方へのメッセージ自分の価値を最大化しようと考えている方へは、できるだけそれに応じた環境を提供していきたいと考えています。フルタイムで働きつつ、週1ワークとして参加することも可能です。空いている時間を活用して、弊社に関与していただければと思います。とくにこれからは、あらゆる職種で働き方・時間の使い方が多様化してきます。時間の使い方が上手な人ほど、チャンスが広がっていくはずです。高まる気運に乗りつつ、ぜひご自身がやりたいと思う仕事にトライしてみてください。